飯高の森
飯高の森
志摩時間 2022年夏号より
山間にある飯高の町
木の国、紀伊半島に位置する飯高(いいたか)には県内最高峰1420㍍の桧塚奥峰(ひのきづかおくみね)があり、養分を含みながら豊かな水が森を流れ、様々な命を育んでいます。
また山からの水が注ぐ櫛田川の上流部は東日本に多い夏緑樹林帯、下流部は西日本独特の照葉樹林帯で、本州に生息する多くの植物種が育ちます。
松阪市飯高町は総面積の94%を森林が占める林業の町。江戸時代から250年以上の歴史を持つ叶林業の堀内楓子(ふうこ)さん(姉)と宣孝(のぶたか)さん(弟)が、飯高の森を案内してくれました。
しかしその後、安価な外国産木材が使用されるようになり、国産木材の需要は減少しているそうです。そんな状況のなか、叶林業は約30年前から多様性のある森林の姿を目指し、様々な広葉樹の植樹を始めました。
楓子さんは「杉や檜だけでなく、水に強い栗の木や、タンスに使われる桐などを育て、日本で培われてきた木の文化を広げて行きたいです」と話します。宣孝さんは「針葉樹が悪いというわけではなく、檜も美しく強度があり寺社にも使われるなど古くから人々に愛される木材です。私たちは森の環境に合わせて木を育てることを大切にしています」。
広葉樹の落ち葉は、腐葉土に住み着く微生物が早く分解できるので、養分が豊富な肥えた土を持つ森となります。「腐葉土は空気を含み細かな根が張っているため土が流れにくく山を守る役割も果たしています」。
土を手にした塚原和食総料理長が「栄養を感じる香りですね」と話すと、杉原シェフソムリエが「熟成したワインの香りを腐葉土に例えることがあります。力強い生命力の香りでしょうね」。
楓子さんは「養分が豊富な土には山そのもののエネルギーが詰まっています。山から流れる水に養分を与えて多様な生き物を育む命の源です」。栗野料理長は「山から川、平野、海へと繋がる命の循環。シンプルですが改めて大事なことだと実感しました」。
「木が育つのは、太陽、雨、山、土などの自然の力です。私たちができることは極めてわずかしかない。林業家の私たちにできることは、100年先の山の未来を考え、森を守り続けることだと思うのです」。
楓子さんは地域を継承する次世代のため、地元の子どもたちに山や木の楽しさを知って欲しいとワークショップなども行い、地域ぐるみで山への関心を高める活動も行っています。
山を後にした樋口総料理長は「今ある自然の環境や状況をどう捉えて発信していくのか。それは海にも共通する大切なことです。海の豊かさの源は山でもあり、土を触ったときのふかふかした感覚は山の生命力に満ちていて、たっぷりの栄養を感じる幸せな香りでした。未来へ繋げていきたい大切な命の物語ですね」。
三重の木を使ったオリジナルコースター
ザ クラシック、ザ ベイスイート ブティックで販売を予定しております。
※販売日、料金等詳細が決定しましたらホームページでお知らせいたします。
※コースターのデザインは変更になる場合があります。
総料理長 樋口 宏江 | 2014年に志摩観光ホテル総料理長に就任、2016年伊勢志摩サミットでワーキングディナーを担当。2017年に農林水産省料理人顕彰制度、料理マスターズブロンズ賞に女性初、三重県初の受賞。 |
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和食総料理長 塚原 巨司 | 1987年都ホテル大阪(現シェラトン都ホテル大阪)日本料理「都」、「うえまち」で研鑽を積む。2016年伊勢志摩サミットにて和食料理の提供に携わる。2019年、志摩観光ホテル和食総料理長に就任。 |
シェフソムリエ 杉原 正彦 | 2011年全日本最優秀ソムリエコンクールセミファイナリストなど数々のコンクールで入賞。伊勢志摩サミットでは、日本ワイン選考委員会メンバーと飲料サービス責任者を担当。 |
リアン・山吹 料理長 栗野 正也 | 2020年志摩観光ホテル鉄板焼き山吹料理長となる。多くの現場経験を活かし、カウンターでの会話と臨場感を愉しめる鉄板焼きを提供。 |
志摩観光ホテル季刊誌「志摩時間」
そんな季節の移ろいとともに、志摩観光ホテル季刊誌「志摩時間」では、地元の文化や豊かな自然などを通じて、伊勢志摩の四季をご紹介しています。