地球に優しく。サスティナブルシーフードが広げる未来。

スジアオノリの陸上養殖。

志摩時間 2022年秋号より

左から杉原シェフソムリエ、塚原和食総料理長、野呂さん、樋口総料理長、栗野料理長、奥村さん

南伊勢町田曽浦では南伊勢マリンバイオによるスジアオノリの陸上養殖が行われています。親会社は環境や製品分析を専門に50年の歴史があり、地域貢献のプロジェクトとしてスタートした事業です。近年スジアオノリの海面養殖が海水温の上昇や栄養源の減少で2割近くまで減少していることから、高知大学の特許技術を借りつつ、分析技術を陸上養殖に用いることでスジアオノリを生産しています。南伊勢マリンバイオでは種苗の採苗から出荷まで一貫して行っており、昨年は約4㌧を出荷。一年を通して生産できるようになるには、様々なハードルをクリアしなければいけなかったそうです。まず天然のスジアオノリは冬から春に旬を迎えますが、晩秋から春の低水温、初夏から秋の高水温それぞれに対応する株を使い分けていると工場長の奥村元彦(おくむらもとひこ)さんが説明してくれました。「株の切り替えのタイミングは見極めが難しく、天候や気温の日々のデータを基に判断しています」。
 

24基の大型水槽では水流でスジアオノリを攪拌しながら育てる

また、スジアオノリは地下海水にチッ素やリンなどの養分を配合し掛け流しで、成長に合わせて養分量などが異なる水槽に移し替えながら約1ヶ月かけ育て上げます。始め0.5㎜程だった苗は収穫時には長さ80㎝にもなるそうです。「スジアオノリは繊細で水温に敏感。常に温度との戦いで目が離せないです」と奥村さん。
 

養殖の初期段階から育成に問題がないか毎日確認

日々の目視だけでなく、リアルタイムモニタリングシステムも導入。各水槽の水温、気温、累計日射量などを計測し、データとスジアオノリの発育状態や生産量を比較しながら安定出荷を行っています。
 

収穫したスジアオノリは、素材の風味を活かすため水道水99%と地下海水1%に配合した水で洗います。事業本部長の野呂啓史(のろけいし)さんは「海苔業界は数字で表せるような明確な製品基準がありませんが、私たちは高い自社基準を設け味、香り、色を追求しています」。塩味バランスを一定に保つためナトリウムと塩素濃度の基準値を設定し定期的に測定。風味を閉じ込め、色を美しく保つために、乾燥の工程では温風を使わず、冷風乾燥で時間を掛けて乾かします。細かな管理を経てできあがった製品はさらに色を分析し、基準外は廃棄するという徹底ぶり。出荷前には金属探知機で異物検査を行い、トレーサビリティも導入。単なる養殖場ではなく、品質管理が徹底された工場を目指しているという工場長の言葉に一同納得の表情。
出荷前のスジアオノリの箱を開けるとその豊かな香りに「想像以上ですね」と塚原和食総料理長、杉原シェフソムリエ、栗野料理長は驚きの様子。
野呂さんは「生産開始から3年目。研究室とは違い、四季があるなかで生物を育てる難しさを感じる日々です。でも上手く行かなかったときには、日々のデータを分析して原因を探り、新たなシステムを導入し解決することができるのが我々の強みだと思っています。海での養殖はコントロールに限界があります。陸上養殖でできることを最大限に活かし、海洋資源を支える未来の一端を担えればと思っています」。
 

板状で出荷され食品メーカーで加工後スーパーなどの店では粉末の状態で並ぶ

樋口総料理長は「豊かな香りと美しい色は、初めて伺った時に驚きと感動がありました。スジアオノリを季節を問わずに安定して使わせていただけることに感謝しています。気候変動で海の環境も変わっていくなか、他の海藻の陸上養殖の研究も進んでいるとお聞きしました。これからが楽しみですね」。

海藻のなかでも香り、風味が良いスジアオノリ。通常は粉末で販売されていますが長く成長する姿を活かしたく板状で仕入れさせていただきました。美しい緑色を見た目にも愉しめるひと皿です。
伊勢まだいは塩をあて、旨味を閉じ込め形よく成形するため44度で低温調理。魚の上にクリーミーなマッシュポテトを絞ります。スジアオノリを細くスジ状にほぐしたら魚とマッシュポテトを巻きオーブンで焼き上げます。
仕上げのブールブランソースで酸味とコクを加えながらも、全体の味わいは軽やか。熱することでさらに高まるスジアオノリの素材本来の豊かな香気を愉しめるお料理です。
品質にとことんこだわった、南伊勢産陸上養殖スジアオノリの魅力をぜひご賞味ください。

10月〜11月の「エレガンス(¥27,000)」「アバンタージュ(¥18,900)」コースにてお召し上がりいただけます。
※入荷状況によりご用意できない日がございます。
 

フレンチレストラン「ラ・メール」 ザ ベイスイート5F
ディナー 17:30-21:00(L.O.19:30)
※現在営業時間を一部変更しています。

伊勢志摩の地は、ゆるやかな時間の流れに合わせて、表情を少しずつ変えながら、四季折々の味覚や色彩を私たちに届けてくれます。
そんな季節の移ろいとともに、志摩観光ホテル季刊誌「志摩時間」では、地元の文化や豊かな自然などを通じて、伊勢志摩の四季をご紹介しています。

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