左から櫻井さん、樋口総料理長、杉浦さん、和泉さん

志摩半島の入口に位置する伊勢市は年平均気温が15度から17度と温かく、その穏やかな気候を活かしガーベラやバラなど高品質な切り花の栽培が1978年から行われています。また伊勢市は地理的に名古屋、大阪、京都の市場への出荷にもアクセスが良いため多くの取扱いがあり、品質は鮮度も含めて高く評価されています。

第44回 全国豊かな海づくり大会期間中の館内装花

志摩観光ホテルではロビーをはじめとした館内装花やプレゼント用の花束のほか、2025年に伊勢志摩で開催された「第44回 全国豊かな海づくり大会〜美し国みえ大会〜」では三重県の協力のもとホテル館内の各所に伊勢の切り花を使った装花を施しました。

伊勢のガーベラやバラ農家の元へ、生産に関わる三重県やJA伊勢、ホテルの装花を担当する生花店の方々とともに樋口総料理長が訪ねました。
そこには品質にこだわり、部会の仲間と切磋琢磨しながら花を育てる生産者の姿がありました。

ガーベラ栽培について話す杉浦さん

伊勢市植山(うえやま)町でガーベラを栽培しているビニールハウスに入ると、一面に咲く色鮮やかな花々。ガーベラの生産を30年続けるJA伊勢洋花部会の農家、杉浦健三(すぎうら けんぞう)さんが迎えてくれました。

伊勢市では洋花部会に所属する5名の農家が、合わせて年間約250万本のガーベラを生産しています。「私だけで年間約50〜60万本、多い日では一日に1万本を出荷することもあります」。

圃場には約1万3千本のガーベラが植えられ、養液を固形培地に流して育てる養液栽培で管理されています。

ガーベラは根元の〝株〟と呼ばれる部分から茎を伸ばして花を咲かせ、約2週間で出荷できる大きさに成長。ひとつの株からは年間で70〜80本の花が生まれます。養分を花に集中させるため、不要な茎を取り除く作業や養液の管理と日々の手入れが欠かせません。

出荷の際は1本ずつ専用のビニールキャップを被せるなど丁寧に扱います。

「ガーベラは繊細な花で環境管理が品質に直結します。高温や直射日光を避け、風通しを保つことで健やかに育てています」。
健康的に育てられた伊勢のガーベラは出荷後、1ヶ月ほど日持ちするそうです。

ハウス内のガーベラを観察するのはホテル装花全般を担当する生花店「花屋敷」の代表、和泉真穂(いずみ まほ)さん。
「ガーベラの品種は世界中にあり、色だけでなく形も様々。伊勢ではどれくらいの品種を育てていますか」と訊ねると「ピンク色をはじめ、黄色や赤など約53種類です。また品種改良のスピードも早いので個性を見極めながら栽培を行っています」と杉浦さん。

三重県中央農業改良普及センター・櫻井(さくらい)さん

三重県中央農業改良普及センターの櫻井(さくらい)ゆきみさんは「私たちは農家さんのサポート役として常に情報交換をしています。部会の皆さんは品質向上のため病気対策や資材の研究にとても熱心に取り組まれています」。

杉浦さんは「やってみるまで分からない。ものづくりに共通する覚悟ですが、良い花ができた時の喜びも大きい仕事です」と話します。

中央:バラ部会の野中さん

伊勢市小俣(おばた)町のバラを育てるハウスには出荷を待つ開花直前の花々。バラ部会の野中穂積(のなか ほづみ)さんに案内いただきました。
野中さんのハウスではアバランチェ、ゴールドラッシュなどのバラの品種を約7千6百本、養液栽培で育てます。

「バラは花だけでなく葉も評価されます。乾燥するとカビや病気の原因になるため室温は23〜25度、湿度は70〜80%に保つため細霧冷房などを使いコントロールしています」。こうした先進技術を取り入れることで品質を維持、市場での評価も高いそうです。

茎が太く健康的で大きな花に成長する伊勢のバラ

「バラ部会は9名でそのうち4軒は家業を継いだ30〜40代の方々。私たちは部会単位で出荷するため同じ品質に育てることが必要です。また将来に向けた設備投資も積極的に行っています」。

伊勢バラ部会が開発した特許〝1本残し剪定技術〟を用いた枝の間引きや健康状態のチェックなど日々の手入れを行いながら、年間約320万本を出荷しています。

和泉さんは「伊勢のバラは昔からブランド品として市場でも知られています」。

野中さんは「戦後、伊勢では菊の栽培が産業化した基盤があり、そこからバラや洋花の栽培に発展した歴史があります。現在、生産者の数は多くはないですが、技術や情報を共有するため月に一度は集まり、顔を合わせています。品質に妥協せず、皆で切磋琢磨することでブランド力を維持できているのだと思います」。

最後にバラ農家の魅力を聞きました。
「先代はイチゴ農家で私の代でバラを始めました。結婚式や卒業式、プロポーズでは永遠にという意味を込め108本のバラを贈る方もいます。笑顔の近くにバラがある。そうしたシーンを想像しながら楽しく仕事をしてきました」。

ガーベラやバラ、それぞれの生産現場を訪ねた樋口総料理長は「お二人の花に向き合う優しい眼差しと、仲間がいるから頑張れるという言葉が印象的でした。想いのこもった美しい花もかけがえのない伊勢志摩の魅力ですね」。

ホテルの各レストランでは、お誕生日や記念日などのお客様へお祝いの演出を行っています。
フレンチレストラン「ラ・メール」、レストラン「ラ・メール ザ クラシック」では生花をふんだんにあしらったアニバーサリープレートをご用意。

コース料理のデザートとともに華やかなプレートが運ばれてくるとゲストも笑顔に。
季節の花々でお祝いの気持ちを届けたいという樋口総料理長の想いから始まりました。
色とりどりに飾られたプレートを手掛ける花屋敷代表の和泉さんは「お客様の特別な時間をイメージしてお作りしています」と話します。

また花屋敷は館内各所の装花も担当し、フロントロビーを始めとした花々は多くのお客様に親しまれています。「自然に抱かれたホテルならではの装花がテーマです。都会的なスタイリッシュさよりも、自然界にあるような美しさを意識し、ホテルが大切にする〝癒し〟の要素も取り入れるため日頃から打ち合わせを重ねています」。

世界女性デーにはテーマカラーの黄色の花を、クリスマスやお正月での華やかな装花など、写真に収めるお客様の姿も多く見られることから、館内で開催されるフラワーアレンジメントのワークショップにもつながっています。

ザ クラシックのロビーで装花を仕上げる和泉さん

高校時代から生け花を習い、ヨーロッパのアレンジメントも学んできた和泉さんが大切にしていることを教えてくれました。

「和の自然を愛でる感性と、洋の装飾的な美しさ。その両方が私の装花に表れていると思います。花と向き合い〝この花はこう生けて欲しい〟と語りかけてくる感覚を大切にしながら、一つひとつを仕上げています」。

ご来館、ご宿泊のお客様を対象に開催しているワークショップ、「Fleurs de saison(フルール ドゥ セゾン)」は2ヶ月に一度、午前と午後の2部制で行われており、講師はホテルの装花を手がける花屋敷代表の和泉さんです。

会場となるザ クラブ内「藤の間」は花の香りに包まれ、窓の外には庭園が広がります。ワークショップは季節ごとのテーマで進行。講師の説明とともに参加の皆さんは思い思いに花を生けていきます。

「器とのバランスや花の長さ、高さなど最低限のルールはお伝えしますが、それ以外は自由です。一つひとつの花と向き合い、美しさを感じていただく時間が癒しにつながればと思っています」。

和泉さんとスタッフが丁寧にアドバイスを行いながら、60〜80分程で作品は完成。手ぶらで参加でき、完成した作品はそのままお持ち帰りいただけ、すぐに飾れるのも人気のポイント。
「ここで覚えたことは、ご自宅でも活かせます。ぜひ、花のある暮らしを愉しんでいただけたら嬉しいです」。

カフェ & ワインバー「リアン」店内

ワークショップの後は、隣接するカフェ&ワインバー「リアン」へ。紅茶と季節のスイーツでゆったりと過ごします。贅沢で心が豊かになる花とのひと時です。

開催日 8月4日(火)、10月13日(火)、12月15日(火)・16日(水)
時 間 午前の部 10:00~12:00
午後の部 14:00~16:00
料 金 おひとり様 ¥7,500(都プラス会員様 ¥6,500)
※花材・持ち帰り用袋・ティーセット(紅茶・お菓子)付
定 員 各部20名様
講 師 ホテル内の装花をコーディネートするフローリスト(花屋敷)
ご予約 開催日3日前 ※定員に達し次第受付を終了させていただきます。
ご予約・お問い合わせ お電話またはホームページの問い合わせフォームにて承ります。
志摩観光ホテル(予約)Tel.0599-43-1211 9:00~20:00

 
伊勢志摩の地は、ゆるやかな時間の流れに合わせて、表情を少しずつ変えながら、四季折々の味覚や色彩を私たちに届けてくれます。
そんな季節の移ろいとともに、志摩観光ホテル季刊誌「志摩時間」では、地元の文化や豊かな自然などを通じて、伊勢志摩の四季をご紹介しています。

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