地域をつくる
美杉(みすぎ)のマコモ
津市美杉町(みすぎちょう)は三重県西部の奈良県境に位置し、町の約9割を森林が占める中山間地域です。
大洞山(おおぼらやま)などの山々に囲まれ、伊勢本街道をはじめ5つの街道が通ることから、江戸から明治にかけて伊勢神宮への参拝客で賑わいました。
また、戦後から高度経済成長期には林業でも栄えた山里です。
そこで2005年、農林水産省の「中山間地域等直接支払制度」を活用し、水田での栽培に適したマコモの生産を始めました。
真菰(まこも)はイネ科の多年草で、古代日本では穂に実る種子が貴重な穀物として食されていました。
また、葉や茎は神が宿る植物とされ、出雲大社の御本殿などに掛けられる注連縄や一部の神社では茅の輪の材料として用いられるなど、神事にも関わりの深い植物です。
樋口総料理長、塚原和食総料理長とマコモ畑を訪ね生産者さんにお話を伺いました。
そこには、地域の存続を願い、粘り強く挑戦を続ける農家の姿がありました。
集落の未来に希望を宿す、マコモづくり
山あいの小さな水田に伺うと、2メートルほどの青々と育つマコモが風に揺れています。
「生まれ育った山々の風景は、年を重ねても美しいと感じますね」。
そう話すのは「八十六石(はちじゅうろっこく)まこもの集い」の代表であり、マコモ農家の横川惣吾(よこかわ そうご)さん。
膝下まで水に浸かりながら作業をする横川さんに、マコモ栽培について教えていただきました。
マコモは、山から流れる清らかな水を引いた水田に5月に定植し、水を張ったまま育てます。
収穫は9月末から10月で収穫前の8月頃には、食用菌である黒穂菌(くろほきん)を茎に付着させることで、茎の根元が太さ3〜5㎝、長さ15〜25㎝ほどに肥大し、食材として使われる〝マコモダケ〟となります。
収穫されたマコモは、毎年10月に開催される「まこも収穫祭」でも地域を盛り上げており、昨年は町内外から約500人が獲れたてのマコモを求め訪れたそうです。
「子どもが減った地区ですが、この日ばかりは太郎生がにぎやかになり嬉しいです」と微笑みながら話す横川さんがマコモづくりを始めた頃の思い出を語ってくれました。
ひとつの挑戦が、地域を元気に
横川さんは、当時を振り返り、
「流通量が少ない野菜なので、最初はなかなか売れませんでした。〝石の上にも3年〟といいますが、軌道に乗るまでには5年以上かかりました」。
転機となったのは、県の支援機関を通じた出会いといいます。
「給食を担当する栄養士さんとのご縁で、津市や松阪市の学校給食で使っていただけるようになり、今は全体の7割を占める年間約1トン余りを出荷しています。また地元、美杉小学校の3・4年生はマコモ栽培の農業体験にも参加しています」。
横川さんにおすすめの食べ方を尋ねると「皮ごと炭火で焼くと、香ばしさとほのかな甘みを感じられます。また我が家はすき焼きの具材にするのが定番ですよ」。
塚原和食総料理長は「加熱しても独特の食感があるので、しっかりとした味付けの料理にも合いますね」と興味深く耳を傾けます。
当初、7名で始まった「八十六石まこもの集い」は、移住者も加わり現在10名まで増えました。
作付面積も当初から約2倍となる1.4ヘクタールと拡大しています。
横川さんに、これまでとこれからの想いを伺いました。
「ひとりでは何もできません。マコモづくりは、地域を次の世代へつないでいきたいという思いから始めた取り組みで、これまで多くの方が支えてくれました。古くから大切にされてきたマコモを通して、この太郎生の集落を守り続けたい。その気持ちはこれからも変わりません」。
| 総料理長 樋口 宏江 | 2014年志摩観光ホテル総料理長に就任、2016年伊勢志摩サミットでワーキングディナーを担当。 2017年に農林水産省料理人顕彰制度、料理マスターズブロンズ賞。 2023年フランス農事功労章シュヴァリエ受章。 2024年料理マスターズシルバー賞、文化庁長官表彰を受賞。 |
|---|---|
| 和食総料理長 塚原 巨司 | 1987年都ホテル大阪(現シェラトン都ホテル大阪)日本料理「都」、「うえまち」で研鑽を積む。 2016年伊勢志摩サミットにて和食料理の提供に携わる。 2019年、志摩観光ホテル和食総料理長に就任。 2025年、日本調理師連合会最高位名匠を受嘱。 |
総料理長 樋口宏江の料理ストーリー
和食総料理長 塚原巨司の料理ストーリー
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