ホテル伝統のカレー

志摩時間 2022年秋号より

志摩観光ホテルで約50年前に誕生し、伝統のレシピを守りながら愛され続けているカレーがあります。
伊勢志摩にご旅行に来られたお客様の印象深い想い出として語られることも多く、今もクラシカルな設えでご提供。変わらないその味には、ホテルの料理哲学が流れています。今回はこだわりのカレー作りの工程を、厨房からリポートします。
 

大量のバターと玉ねぎをソテー

カレールーの仕込みは、1度に約600人分を作ります。7ℓの澄ましバターで27㎏の玉ねぎを飴色になるまで2時間ソテーします。低温でじっくり火を入れることで玉ねぎの甘味とバターの旨味を残します。続いて生姜とニンニクのみじん切りを加えてさらに炒めます。全体が馴染んで香りが出てきたらスライスしたニンジンとリンゴを加えます。
 

調理工程を教えてくれる平山シェフ

ラ・メール ザ クラシックの調理を担当する平山シェフは「リンゴは50個、丁寧に皮をむきスライスします。フレッシュさを保つため、鍋に入れる直前に仕上げています」とこだわりを教えてくれました。ここからさらに1時間炒め、独自にブレンドしたカレー粉を加えてソテーします。続いて小麦粉を入れ、完全に混ざり合うまで熱を加えながら混ぜます。そこに丁寧に種や皮を取り除いたホールトマトを少しずつ足していき、艶が出てきたところでココナッツミルク、チキンブイヨンを加えます。奥深い味と甘味を出すチャツネ、塩、ブーゲガルニを入れ、さらに2時間煮込みます。
 

滑らかな食感に仕上がったカレーソース

工程のなかでそれぞれの素材は溶け出し滑らかに。火を止め、ザルで漉すとさらに舌ざわりもきめ細かなカレーソースが完成です。
レストランではカレーのご注文が入る毎にこのソースと具材を合わせ仕上げます。例えば伊勢海老カレーは伊勢海老の殻をカレーソースと一緒に煮込み裏ごしをして香りを移し、さらに伊勢海老が詰まったアメリカンソースを加えます。鮑カレーは仕上げで鮑の肝バターが加わり独特なコクと濃厚な旨味のカレーとなります。
 

たくさんの素材でじっくり煮込むチキンブイヨン

— 2倍の素材と時間を掛ける
志摩観光ホテルの欧風カレーに欠かせないのが、チキンのダブルブイヨン。

志摩観光ホテルにおけるフランス料理のベースとなる味です。鶏、タマネギ、ニンジンなどを入れ旨味を抽出。灰汁を丁寧にすくいながら2〜3時間かけて煮ます。その後、ザルと布で漉し、脂などを取り除きます。粗熱を取ったブイヨンに再び1回目と同量の食材を入れ、また2〜3時間かけて同じ工程を繰り返します。鍋からは1回目よりさらに香りが立ち、琥珀がかったスープは、クリアで旨味が凝縮された奥深い味わいになります。

透き通り雑味のないチキンブイヨン

火加減は弱すぎると味が出ず、強すぎると雑味が混じるので目を離さず調整しながら仕上げ、黄金色に輝くダブルブイヨンは完成します。このブイヨンがホテルの味を支えています。
 

炊く前に米を炒めて味を染み込ませる

— 変わらない味はライスにも
カレーとともにご用意するサフランライスも伝統のレシピ。たっぷりのバター、タマネギ、サフラン、ローリエと手際よく仕込んでいるのは20年以上のベテランスタッフ。寸分変わらぬ味を守り続けています。
人の手と加える素材、時間を掛けた分だけ厚みのある味、香りは何年経っても心に残るひと皿となります。

ザ クラシック1F
ランチ  11:30-14:30 (L.O.14:00)
ディナー 17:30-21:00 (L.O.19:30)
※現在営業時間を一部変更しています。
伊勢海老カレー¥14,800(予約制 2日前 18時まで)
鮑カレー   ¥15,500
海の幸カレー ¥6,000(2022年10月より ¥6,500)

伊勢志摩の地は、ゆるやかな時間の流れに合わせて、表情を少しずつ変えながら、四季折々の味覚や色彩を私たちに届けてくれます。
そんな季節の移ろいとともに、志摩観光ホテル季刊誌「志摩時間」では、地元の文化や豊かな自然などを通じて、伊勢志摩の四季をご紹介しています。

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